死の天使・タジオ

◆1971年の『キネマ旬報』より。。


「日本に来たのは、もちろん初めてであり、日本に関する知識は全くなかった。
ただ黒沢明の『七人の侍』を見て、その巧みなストーリーの展開に驚いたことを記憶している。
二年前、スウェーデン映画『純愛日記』に端役で出演して、その後、
『ベニスに死す』の構想を抱いたビスコンティ監督に知人を通じて会い、
しばらくして、ビスコンティ監督から出演依頼を受けた、
というのが『ベニスに死す』に出演までのプロセスである。

映画に出演が決定した後、トーマス・マンの原作を読んでみた。
いささかクラシックな趣に装飾された貴婦人とパラソル、
上流階級に漂う典雅なものうさ、
そしてそこに流れる美への暗い憧憬。
その荘重な世界に素直に感動した。

映画は、原作の踏襲ではなく、ビスコンティ監督の脚色が、多分に施されている。
トーマス・マン原作小説のモデルはグスタフ・マーラーだと言われているが、
ビスコンティ監督は、この偉大な音楽家マーラーの逸話を随所にカットバックして、
むしろ、逆にマンの発想の原初に戻ったように演出している。
そして、出来上がった作品を見て、ビスコンティ監督独自の荘厳なロマンティシズムの世界に、僕も感動した。

この作品に関して、僕の演じた美少年タジオが、純粋な美の現出であるのか、
あるいは、それに加えてアッシェンバッハの心情を通しての、
ホモセクシャルな色合いを含んでいるのかという点については、
さまざまな解釈がなされている。
しかし、僕が当初、ロンドンで撮影に先立つ脚本説明を受けた時には、
この作品におけるタジオ少年は、”死の天使”であると教えられた。
アッシェンバッハの魂を虜にして、最後に死にまでも招き入れてしまう”死の天使”についての理解は充分といえないまでも、
僕なりの解釈で役にぶつかったつもりでいる。

ビスコンティ監督は決して時代におもねることなく、
死の輝きをそっと押し包んだ、優雅な美の世界を描き出したと思う。

現在、俳優を続けるかどうか、迷っているが、自分の希望としては、音楽の方へ進みたいと思っている。
とにかく『ベニスに死す』がより多くの人に見られることを、望んでいる。」
  
            by ビョルン・アンドレセン(俳優)
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ビョルン・アンドレセンは、大変純粋で、感性豊か。。
言葉の随所に垣間見られる知性と、落ち着きが感じられ、貴重な発掘をしました。

この作品をもって、音楽の方向へ行ってしまったけど、タジオは永遠です。。。。


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by mokkori_mattari | 2010-01-27 17:29 |